「空飛ぶタイヤ」池井戸潤

【あらすじ】
小さな運送会社のトレーラーが起こしたタイヤ脱輪による死亡事故。
事故原因は整備不良か、それとも…。
「容疑者」と目された男が、
家族・仲間とともにたったひとつの事故の真相に迫る、
果てなき試練と格闘の数か月!
【感想】
最初に言います。傑作です。
最後の最後で今年一番の作品に出会えた気がします。
タイヤ脱輪による死亡事故によって、窮地に立たされた運送会社。
その必死の奮闘と、次第に明らかになる巨大企業の悪を描いた作品。
実際に起きた三菱のタイヤ事故をモチーフに書かれてます。
事故があってからの運送会社は本当に苦しくなっていって、
自分たちは悪くないとわかっているのに誰も信じてくれない。助けてくれません。
融資も切られ、取引先に断られ、被害者にはなじられる。
自動車会社が悪いと主張すれば責任転嫁だと叱責される。
そんな本当に苦しい状況から懸命に戦っていきます。
そしてその裏で自動車会社の社員や、銀行の人間も動いていく。
面白いのはそれぞれの人間が直接は絡まないことです。
あくまで各個人の主義主張のもとに動いていて、目に見えて協力しあうことはない。
時には逆に事故原因を隠蔽する方向に動いたりもする。
そういうところがすごく人間臭くてリアルです。
きれいすぎる正義感を振りかざすひとがいない、というのかな。
資金繰りが苦しいときにお金を見せられれば悩むし、
夢が叶うかもしれない、となればそっちに転んでしまう。
本当にありえる舞台裏だと思えます。
あの結末に至ったのも本当に奇跡的な偶然の連続で、
ほんのちょっとしたことで結末は変わっていたと思います。
だから最後まで本当にドキドキして読んでたし、
終盤のある場面では感動して涙が出てしまいました。
それほどに良かった。
人生のベスト本にランクインしそうなくらい好きな作品でした。
是非是非読んで見てください。
【おすすめ度】
★★★★★

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池井戸 潤

講談社
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