「厭魅の如き憑くもの」三津田信三

【あらすじ】
神々櫛村。谺呀治家と神櫛家、二つの旧家が微妙な関係で並び立ち、
神隠しを始めとする無数の怪異に彩られた場所である。
戦争からそう遠くない昭和の年、
ある怪奇幻想作家がこの地を訪れてまもなく、最初の怪死事件が起こる。
本格ミステリーとホラーの魅力が圧倒的世界観で迫る「刀城言耶」シリーズ第1長編。
【感想】
刀城シリーズの1作目。
神、憑き物、黒、白、そんな古くからの慣習に囚われた村で起きる事件を描いた作品。
これも面白かった。
3作目を最初に読んだのでこのシリーズを読むのは2作目なんですが、
これも民俗ホラーとミステリの融合がすばらしい。
まず閉鎖的な慣習や文化の中で恐怖を感じさせてくれる序盤。
何かが憑いたしか思えない状況、過去の事件、神隠し、得体の知れない気配、
そしていつでもどこで皆を見つめる不気味なカカシ様・・・。
そして事件が起きてからは不可解な状況が続き、わけがわからなくなったところで、
それを見事に紐解く最後の結末。
すばらしかった。
あと最後に全てを明らかにするときの提示の仕方も好みです。
完璧な一つの推理を披露するんじゃなくて、最後に残った可能性を提示する、というあのやり方。
可能性が提示されるたびに驚かせてくれますしね。
ただ唯一欠点をあげるとすれば、ちょっと読みづらさがあります。特に序盤。
そのせいでページ数の割には時間がかかります。
その甲斐はありましたけどね。
3作目の首無と比較すると、こちらのほうがホラー要素は強め。ほんとに怖いです。
ミステリとしては3作目のほうが気持ちいいかな。
いずれにせよおすすめの作品です。
怖くても大丈夫という人は是非どうぞ。
【おすすめ度】
★★★★★