「空の中」有川浩

【あらすじ】
200X年、謎の航空機事故が相次ぎ、
メーカーの担当者と生き残った自衛隊パイロットは調査のために高空へ飛んだ。
高度2万、事故に共通するその空域で彼らが見つけた秘密とは?
一方地上では、子供たちが海辺で不思議な生物を拾う。
大人と子供が見つけた2つの秘密が出会うとき、
日本に、人類に降りかかる前代未聞の奇妙な危機とは―
【感想】
海の底がすばらしかったのでこちらも読んでみました。
突然空を飛ぶ巨大生物が現れた。そんな日本を描いた物語です。
その生物の謎を解き明かそうとする空自の人達と、
その生物をたまたま拾った子供たちの話が交互に描かれます。
それぞれがそれぞれの方法で未知の生物と会話をしながら話は進んでいきます。
そしてだんだん絡みあっていく。
空自のほうは、適当に見える男と気の強い女、という組み合わせなのですが、
その性格がやや漫画的で最初は気になります。
でも慣れてくればそのやりとりが楽しくなってくる。
こちらは問題を解決していく大人たちの物語として楽しめます。
一方で子供たちのほうは青春ものです。
家族を失った悲しさや寂しさ、
何が正しくて何が間違ってて、どっちに行っていいのかわからない。
そんな悩みを抱えた子供を支えてくれるまわりの人達。
そんな温かい話になっています。
というわけで全体的に良い作品なのですが、
一つ気になったのは未知の生物中心の話であること。
海の底も未知の生物が現れる話ではありましたが、
あちらは非常時における子供たちの心の動きを描いた物語でした。
でもこの空の中は現れた未知の生物そのものに焦点が当たった話になっています。
もっと人間のほうを掘り下げてくれると、特に子供のほうの話が深かったらもっと好みでした。
未知の生物の設定にワクワクしちゃう!って人なら気にならない部分だと思います。
良作でした。
【おすすめ度】
★★★★☆

空の中 (角川文庫)空の中 (角川文庫)
有川 浩

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