「砂の王国」荻原浩

【あらすじ】
全財産は、三円。転落はほんの少しのきっかけで起きた。
大手証券会社勤務からホームレスになり、
寒さと飢えと人々の侮蔑の目の中で閃く―「宗教を興す」。
社会を見つめ人間の業を描きだす著者の新たなる代表作、誕生。
【感想】
家族も仕事も失った男たちが金のために宗教を起こす話。
何もないところから宗教を作り出し、
少しずつ少しずつ信者を増やして成功していき、
そしてその先は・・・と展開していく。
設定も話の流れも仮想儀礼とほぼ同じ。
ただそれぞれが描いているものは違う。
仮想儀礼は宗教自体を深く描いている印象。
宗教のあり方、宗教になぜ人は頼るのか、頼ってきた人の心の闇とは、
そんな宗教そのものの闇や怖さに焦点が当たっている気がします。
一方でこの砂の王国が描いているのは主人公の木島。
宗教の話ではあるんだけど、宗教自体の描写はややあっさりとしていて、
グロテスクな部分はあまり感じさせない。
むしろ創設者である木島の努力や苦悩が中心になってます。
初期のホームレス時代の話も長いですし。
ただこのあたりは仮想儀礼と比較すれば、というだけの話であって、
宗教やその成長過程などの描写はこの砂の王国もリアルで緻密です。
ラストも好みでした。
この設定でひかれた方には十分楽しめる作品だと思います。
ただ仮想儀礼とどちらが好きか?と言われたら・・・仮想儀礼かな。
【おすすめ度】
★★★★☆

砂の王国(上)砂の王国(上)
荻原 浩

講談社
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