「照柿」高村薫

【あらすじ】
男と女が恋に落ち、嫉妬に狂う熱病のような夏。殺人は起った。
野田達夫、35歳。17年働き続けてきた平凡な人生に、何が起こったのか。
達夫と逢引する女、佐野美保子はほんとうに亭主を刺したのか。
美保子と出会った瞬間、一目惚れの地獄に落ちた刑事合田雄一郎はあてもなく街へさまよい出る。
照柿の色に染まった、男2人と女1人の魂の炉。
【感想】
幼なじみだった男二人と、女一人を描いた物語。
人間を描いた物語、と言えばいいんでしょうか。
エンターテイメント的要素がある物語ではなく、
ミステリやサスペンスを期待して読むような作品ではないです。
この作品を何と形容すればいいのか言葉を探していたのですが、
読了後に"魂をゆさぶる現代の罪と罰"という煽りを見て、非常に納得がいきました。
まさに罪と罰だと思います。
主人公たちは結婚もしているし、仕事もちゃんとしているんだけど、
その心にはドロドロとした得体のしれない感情が眠ってる。
その感情が、女と出会ったことや、幼なじみと再会したことで激しさを増していき、
その激しい感情にジリジリと焦がされて・・・非日常の世界へと堕ちていく。
簡単にまとめればこんな話なのですが、
これがリアリティと緻密さに溢れた文章で綴られるからいいんですよね。
楽しい作品ではないのですが、最後の余韻も良かったし考えさせられる作品でした。
罪と罰と聞いてひかれる方は是非読んでみてください。
ジリジリと焼けつくような熱さを味わえるはずです。
【おすすめ度】
★★★★☆

照柿照柿
高村 薫

講談社
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