「聖なる黒夜」柴田よしき

【あらすじ】
東日本連合会春日組大幹部の韮崎誠一が殺された。
容疑をかけられたのは美しい男妾あがりの企業舎弟
それが十年ぶりに警視庁捜査一課・麻生龍太郎の前に現れた山内練の姿だった。
あの気弱なインテリ青年はどこに消えたのか。
殺人事件を追う麻生は、幾つもの過去に追いつめられ、暗い闇へと堕ちていく―
【感想】
暴力団の幹部が殺され、それを追いかける警部の話。
本作の登場人物が出てくる作品が他にもあるようだけど、そっちは未読。
この作者の作品は初めてだったけど、描写が緻密でリアルで重い。
とくに警察内部や捜査のリアルさはすばらしかった。
所轄と本庁の確執、他部署との対立、は社会人としてはすんなり納得がいくもので、
会社と似たようなもんなんだな、と思ってしまったほどだし、
次々と広がって拡散していく捜査や、その中にあるわずかな真実への手がかりは、
まるで自分が捜査の中心にいるような気分になった。
直前に読んだばかりなのもあるけど、高村薫と雰囲気が似てるのかも。
終盤になるにつれて明らかになっていく驚きの真実もたまらないし、
全体を覆う"どうしようもない理不尽さ"から生まれる人間ドラマがすばらしかった。
そのどうしようもないやるせなさが苦しいけど、
だからこそ苦しみもがく姿に読み応えがあったと思う。
楽しい作品ではないけどおすすめです。
ただ唯一の難点は同性愛描写が多いことかなぁ・・・
引くほどの描写はなかったけど、拒否反応を示す人はやめたほうがいいかもしれません。
【おすすめ度】
★★★★☆

聖なる黒夜〈上〉 (角川文庫)聖なる黒夜〈上〉 (角川文庫)
柴田 よしき

角川書店
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