「彼女がその名を知らない鳥たち」沼田まほかる

【あらすじ】
八年前に別れた黒崎を忘れられない十和子は、
淋しさから十五歳上の男・陣治と暮らし始める。
下品で、貧相で、地位もお金もない陣治。彼を激しく嫌悪しながらも離れられない十和子。
そんなダメな二人が繰り広げる愛の物語。
【感想】
不快な中年夫婦二人を描いた愛の物語・・・かな。
ミステリとも書いてありますが、ミステリ要素はおまけ程度です。
この作品の最大の特徴は登場人物に嫌悪感を感じることです。
はっきり言って不愉快です。
主人公の十和子は昔の恋人を想うばかりで何もしない。
ただただ同居人の陣治への嫌悪感も剥き出しにして惰性で生きています。
一方の陣治もお世辞にも好感が持てるとは言いがたい人物です。
十和子への献身は感じますが、それ以外はまるで好きになれません。
そしてこの状況で十和子が不倫を始めて更に状況が混濁していきます。
もうわけがわかりません。どんどん状況が煮詰まっていきます。
感情がドロドロで何も見えなくなっていく。
そしてその先にあるのは・・・あの結末。
思わず、ああ・・・って声が漏れそうになるラストでした。
登場人物のことをまるで好きになれなかったのに、
その中に一点の輝くものが見えた気がします。
この最後のために全てがあると言ってもいいのかもしれません。
読み終わったあとならこれが愛の話だということもよくわかります。
かなり人を選ぶ作品だとは思いますが、
こういう物語もあるんだ、と思わせてくれる作品でした。
【おすすめ度】
★★★★☆

彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)
沼田 まほかる

幻冬舎
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