「アトポス」島田荘司

【あらすじ】
虚栄の都・ハリウッドに血で爛(ただ)れた顔の「怪物」が出没する。
ホラー作家が首を切断され、嬰児が次々と誘拐される事件の真相は何か。
女優レオナ松崎が主演の映画『サロメ』の撮影が行われる水の砂漠・死海でも惨劇は繰り返され、
甦る吸血鬼の恐怖に御手洗潔が立ち向う。
【感想】
御手洗シリーズ。
この作品は「暗闇坂の人喰いの木」と「水晶のピラミッド」のあとに読むべき作品です。
今回は御手洗の登場が遅いパターンです。
ほとんど最後の最後になってから現れます。
というわけでそれまでは事件編です。
今回は不可能犯罪ではなく、
読者にとって信じがたい事件、です。
ただその状況がどんどん悪化していきます。
どんな人から見てもある人が疑わしいんです。
そして中盤以降になるとこのシリーズらしい怪しげな建物や、
ありえない状況も登場してきて、
更に事件も激しくなって・・・
そこでやっと御手洗が登場してきます。
解決編は見事なものなんですが、
一部ちょっとすっきりしなかった。
最初から提示されているとはいっても・・・。
ただこのアトポスにはすばらしい部分があります。
水晶〜や眩暈と同じく、この作品も冒頭に別のエピソードが入るんですが、
このエピソードの出来がすばらしい。
吸血鬼ものなのですが、緊張感に溢れてて手に汗握る内容でした。
正直なところここが一番面白かった。
変な話だけどここだけでも読んで欲しいなぁ。
【おすすめ度】
★★★☆☆