「水魑の如き沈むもの」三津田信三

【あらすじ】
奈良の山奥、波美地方の“水魑様”を祀る四つの村で、
数年ぶりに風変わりな雨乞いの儀式が行われる。
儀式の日、この地を訪れていた刀城言耶の眼前で起こる不可能犯罪。
今、神男連続殺人の幕が切って落とされた。
シリーズ集大成と言える第10回本格ミステリ大賞に輝く第五長編。
【感想】
刀城シリーズの長編5作目。
雨乞いの儀式が伝わる村で起きる殺人事件を描く。
設定はすごく好み。あらすじだけでワクワクした。
そして満州からの過去を描いた導入部もいい。
そしていよいよ刀城たちがその村へと訪れて、
不可能と思われる事件が始まっていく。
ただここからが雰囲気にあまり浸れなかった。
登場人物(探偵側も相手側も)の影響と、
この村がこれまでに比べれば閉鎖的ではないせいか、
やや軽い印象を受けた。
そのせいで怖さも薄れてしまったし、緊迫感も薄かった気がする。
トリック部分や解決についてはいつも通りで、
部分部分を組み替えつつ二転三転する推理は楽しいし、
その結果明らかになる真相も見事。
ただ刀城シリーズのトリックは雰囲気に浸れないとやや浮いた印象も受けてしまうので、
もっとどっぷり世界にひたらせて欲しかった。
あまりプラスのことは書いていませんが、
作品単体としてみれば十分良作だったと思います。
このシリーズには期待が大きいのです!
3か4か迷ったけど3で。
【おすすめ度】
★★★☆☆