「幽女の如き怨むもの」三津田信三

【あらすじ】
戦前、戦中、戦後にわたる三軒の遊郭で起きた三人の花魁が絡む不可解な連続身投げ事件。
誰もいないはずの階段から聞こえる足音、窓から逆さまに部屋をのぞき込むなにか……。
大人気の刀城言耶シリーズ最新書き下ろし長編!
【感想】
刀城シリーズの長編6作目。
今回の舞台は遊郭。花魁たちが主役。
この作品は今までとちょっと違っていて、
民俗ホラー的な要素はほとんどないし、
迷走する推理やどんでん返しもありません。
もちろん刀城による謎解きはあるんですが、
それはちょっと不思議だった現象を少し紐解いただけで、
あっと驚く真相というものでもありません。
なのでいつも通りのシリーズを期待すると、
あれ?これで終わり?と思ってしまいそうです。
ただ物語としてはなかなか面白いです。
事件は大きく3つの時期に分かれていて、
物語もそれぞれの時代がそれぞれの主人公の視点で描かれるんですが、
最初の、遊郭に売られてしまった女の子の日記がすばらしい。
すばらしい、と言うにはややかわいそうな話なんだけど、
リアルな遊郭の描写や当時の時代背景など引き込まれるものがあります。
ただやっぱりミステリ、ホラーな的な作品を期待しているので、
そういう視点だとちょっと不満も残りました。
遊郭と花魁の物語としてはよかった。
【おすすめ度】
★★★☆☆